段階導入から全社導入へ

「VDI大規模導入のコツ:前編」では、おすすめの進め方である段階導入をはじめ、試行導入時の注意点や、実際に着手しないと気づかないポイントなどをご紹介しました。後編は、段階導入への移行にあたり導入部門や関係者から出てくるであろう質問や疑問をあらかじめ想定し対応することへの準備、また全社にVDIを導入したあとの運用ポイントなどをご紹介します。


段階導入フェーズのポイント

試行導入でアプリケーションの動作やパフォーマンス、デバイスやセキュリティといった課題を解決した上で、次はより規模の大きい段階導入へと進みます。これから先は、導入予定の部門責任者をはじめ関連部署へ、VDI導入について理解を得るための説明が必要になります。しかし試行導入の結果をもって説明をしても、同じ部署内のさまざまな役職レベルの担当者から異なる観点からの問い合わせが発生したり、現場の担当者からはお客様やプロジェクト毎に固有の事情があるため盲点であった新たな課題がでてくる可能性もあります。よりスムーズに関連部署へ理解をしてもらうためのポイントは以下のとおりです。

段階導入フェーズのポイント

ITインフラ管理部門
インフラ担当者にとっては、VDIでクライアント環境の一元管理化は大きな負担削減につながります。その反面、VDIと物理デスクトップが混在している環境や、万一ウイルス感染した場合は社内LANに広まる可能性もあるため、今までのセキュリティ対策やルールを見直す必要があります。さらにクライアントPCの故障時の対応なども合わせて確認しておくとよいでしょう。

経営層やVDI導入推進部門
試行導入の段階からVDI導入状況の適宜報告が必要です。導入が計画通りに進んでいない場合は、その原因や理由を対応策を含めて説明することが大切です。特に重要なのは、VDIの導入検討段階から導入後の目標に到達するまでの定性的・定量的な評価軸を設定しておくことです。トップダウンでKPI設定することで段階導入がスムーズに進む場合もあります。

各部署のVDI窓口担当
各事業部や部門ごとにVDIの担当窓口が必要になります。ユーザーの追加や削除など、利用者の管理を徹底することは社内のセキュリティ対策にも寄与します。またVDIはメモリやCPUなど用途に合わせてスペック変更が可能なため、その申請手続きのフローなども整備しておきましょう。(当社では利用者を管理するポータルサイトを設置しています)

利用部門
VDIの利用者からは性能低下に関する苦情が想定されます。その場合を適切に切り分け根本的な原因を特定する必要があります。また複数の原因が重なって引き起こされる場合もあるため、推進部門やインフラ部門などと連携し対処することが必要です。利用者が満足する性能を維持することで、VDI利用の定着を図ります。



全社導入フェーズのポイント

試行導入での検証からさまざまな課題を解決しながら段階導入が進み、いよいよ全社へのVDI導入が完了しました。VDIのメリットであるセキュリティ強化、TCOの削減、BCP対策、そして柔軟な働き方を実現する環境が整いました。VDI導入メリットを享受するためにはきちんとした運用が必要になってきます。

全社導入フェーズのポイン

アカウント管理
新入社員をはじめ中途採用の社員、社内での部門間での異動など、働き方の変化に伴いより流動化が進むと思われます。これまで社員ごとのPCのセッティングやアカウント管理にかかっていた手間を削減できる反面、より早い対応が求められてくるでしょう。

仮想環境のソフトウェア更新や追加
VDI環境の管理やサーバー自体の管理が必要になりますが、アップデートやパッチ当てがユーザー任せにならず、一元管理できるため安全かつ効率よい運用が可能です。

個別アプリケーションやミドルウェアの統制
業務で利用するアプリケーションやミドルウェアは、テンプレートを使うことにより種別やバージョンなどを一元管理できるようになります

外部環境の変化への対応
自然災害や新型コロナなどのパンデミックにより、急激にテレワークが増加する場合があります。そのためVDIの同時接続数を常に把握し、環境の変化へすぐに対応できる準備をしておきましょう。

内部環境の変化への対応
VDIの利用が定着することで、働き方も在宅と出社勤務と選択して働ける環境になります。しかし社員同士のコミュニケーションや、在宅でのセキュリティといった新たな課題も生じているため、その対応が必要となっています。

まとめ

前編から説明したステップ論だけを見ると、至極当たり前で簡単なようにも見えますが、実際に着手してみるとなかなか想定どおりには進みません。各部署により違ったツールやサービスを利用しているケースや、部署によりテレワークを実施する対象業務の範囲も異なってくるなど、導入規模の大きさや定着度合いによっても複雑さや考慮すべき課題も異なってきます。関連部署や担当者との連絡・調整を密にし、各フェーズでの適切な対応を進めることで対処していく心構えが重要です。
プロジェクトの進行は、トップダウンによる指示とスケジュールで動いても、想定通りに進まないことが多々あります。その場合は計画の見直しなど柔軟な対応で調整することも必要です。VDI導入を経験することで、課題感や押さえどころがわかってくると思います。経験が少ない場合は、導入事例や体験談を参考にしたり、導入経験が豊富な企業と組むこともよいでしょう。VDIの全社的な導入は企業にとって大きな決断、また大変なプロジェクトになりますが、導入後のメリットは計り知れません。ぜひ取り組んではいかがでしょうか。


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