はじめに

NTTデータでは、2017年よりvGPUを搭載したVDIサービスをプロフェッショナルユース向けに提供してきました。その後、NVIDIAよりGPU(NVIDIA T4)がリリースされ、2019年から導入検討やトライアルを進める中でコロナ影響によりテレワークが急速に進み、オンライン会議等の動画利用が増え、よりストレスフリーな環境を望む声にこたえるべく、一般ビジネスユーザーを意識したvGPU 搭載 VDI のメニューを開発。2020年末より社内数千人規模で新しいvGPU搭載VDIの利用を開始しました。今回は、NTTデータで行った検証とその結果、vGPUの導入効果を実例でご紹介いたします。

実例で知るvGPU搭載VDIの効果

vGPUの検証の進め方


仮説と検証観点

vGPU非搭載VDIと大差ない費用で提供できれば一般のビジネスユースで採用される機会が増え、テレワークの生産性に寄与するという仮説を立てました。なお、検証観点はビジネスユースでの採用を念頭に置いた計画のため、オフィスソフトの利用や動画再生、操作性能などとし、投資対効果と合わせて見合うものかを判断することとしました。

前提
GPUラインナップは多数ありますが、OA環境においてコストと性能のバランスからNVIDIA T4を採用しました。コストについては、サービス提供にかかる設備や運用保守費も含めたものとしています。また、複数ユーザーを同一基盤で運用するクラウドサービスとして提供するため、特定ユーザーが高負荷作業を行った場合に同一基盤で利用している他者への影響の確認を行いました。


vGPUラインナップ

コスト比較

これまでプロフェッショナルユース向けに提供していたvGPU搭載VDIではNVIDIA P40というモデルのGPUを採用していました。今回検証するNVIDIA T4の電力消費量を比較したところ、従来よりもGPUメモリ1GBあたりの電力消費が半分以下となったことで物理サーバー1台あたりでのVDI集約率があがり、結果、非vGPU搭載VDIの月額利用料と比較しても大差なく提供できることがわかりました。

vGPUコスト比較

性能の検証

性能の検証は、以下の環境で実施しました。

vGPU性能検証の環境

検証1 動画再生におけるVMリソース使用率の比較
4K解像度の3D動画を再生した場合のリソース使用率を比較しました。
VDIでリソース共有する場合、非vGPU搭載VDIのCPU使用率が80~90%になる状態となり、これが継続するとホスト側のCPUリソースが枯渇し、同一サーバー上で稼働している全仮想マシンにCPUの遅延が発生しかねない状況になります。vGPU搭載VDIでは、動画処理がGPUにオフロードされるため、CPUの負荷が20~30%(約60%減)となるため、他仮想マシンへの影響はなくなると言えるでしょう。

動画再生におけるVMリソース使用率の比較

検証2 より業務に近い環境でのVMリソース使用率の比較
Microsoft Teamsを利用し、資料共有、WEBカメラ、3人以上でログインした場合のリソースを比較しました。
ビデオ会議のアプリは、CPU使用率のしきい値が設定されているため、前述の動画再生と比較すると高負荷になっていないように見えます。しかしVDIではCPUの使用効率を高めるためオーバーコミットを設定しており、複数名が同時利用することで実際にサーバーのCPUリソースが枯渇、またオンプレミスのVDIを導入している企業では、テレワークとビデオ会議の利用が増加したためCPUリソースが足りず、利用者は増えていないのにサーバーを増やしたというケースも多くありました。

より業務に近い環境でのVMリソース使用率の比較

検証3 物理サーバーのホストのリソース使用率の比較
VDIを提供しているホストのCPUリソース使用率の比較です。
左の非vGPU搭載VDIホストのCPU使用率が平均で90%と高止まりしていますが、vGPUに処理を任せることにより20~30%も低減し、システム全体の負荷が軽減することがわかりました。今後、GPUを利用したアプリの増加や、ディスプレイの高解像度化により、vGPUの需要がさらに高まることが予測されます。

物理サーバーのホストのリソース使用率の比較

社内ユーザーの声

トライアルユーザーがvGPU搭載VDIを体感してみた感想の一例を紹介します。

  • ファイル編集等の通常業務での変化は特に感じない。
  • ブラウジングやOfficeの動作は早い。映像確認が圧倒的に早い。
  • ZoomやWebExによるオンライン会議は非常に快適。動画再生、WinActor(RPA)のシナリオ実効も快適になった。
  • エクセル、ワード、パワポ作業のみで利用しても明らかに性能がよく、生産性が高かった。
  • マクロ作業、WinActor、大容量データのエクセル作業、複数タブでのブラウザ作業等を並走するとかなり重かったのが解消された。
  • Pythonでの機械学習処理は相当早くなり、感覚値で半分くらいに短縮した。
  • 動画再生や3次元データ(点群閲覧)はかなり快適。一方でそれをzoomなどで共有する際は快適ではなく、通信側の影響を感じる。
  • 動画再生やWebGLはより快適に動作。VDI自体の性能に余裕があっても、画面転送の性能がボトルネックとなり動作遅延を感じることがあるため、社外での利用時はネットワーク環境も充実させたほうがよい。(流体解析シミュレーションソフト利用環境)

ユーザーの声をまとめると、ほぼ全員がビデオ会議や動画再生で快適になったことを体感し、オフィスソフトの利用でも快適性を体感したユーザーが多く見られました。またレンダリング処理、WebGL、3次元データの閲覧では快適さを体感しているものの、社外利用時のネットワーク環境を強化する必要があるとのコメントがありました。VDIはネットワーク接続が前提のため今後も継続する課題と言えます。

総評と今後の展望

業務利用を想定したシーンの比較を数値化することに苦労しましたが、動画処理を行う場合はvGPU搭載VDIのほうが快適になることが定量的、定性的にも確認することができました。またリソースをシェアする場合、シェアリングの方法(早い者勝ち、均等割り等)により、他ユーザーへ負荷を掛ける可能性が、今後の課題としてとらえています。

広く普及しているオフィスソフトや、テレワークで需要が高まっているコミュニケーションツール、デスクトップアプリなど、業務においてパフォーマンス不足を感じているユーザーはもちろん、より快適で安定したテレワーク環境を提供したい企業の方にも、ぜひvGPU導入の検討をおすすめいたします。

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